相続対策でアパート建設は危険?不動産屋が教えないリスク

相続対策で不動産を活用される方は多いと思います。やさしい相続対策でも、アパート建設などの相続対策をご紹介してきました。

【参照記事】
アパートや駐車場で相続対策|早めに贈与

不動産の購入が相続税対策になるって本当?

しかしながら、最近、アパートの空室率が上昇し相続対策のはずが大きな借金を抱えてしまう方も増えているようです。相続対策としてアパート建設を考えている方は、建てる前にどんなリスクがあるのかしっかりと確認しておきましょう。

上昇し続けているアパートの空室率

2016年6月1日の日経新聞で、相続税対策によるアパートの空室率が上昇している記事が掲載されました。

アパート空室率 首都圏で急上昇 相続税対策で建設増え
首都圏のアパートの空室率が悪化している。不動産調査会社のタス(東京・中央)が31日発表した統計によると、3月の神奈川県の空室率は35.54%と2004年に調査を始めて以来、初めて35%台に上昇した。東京23区や千葉県でも空室率の適正水準とされる30%を3~4ポイントほど上回っている。相続税対策でアパートの建設が急増したものの、入居者の確保が追いついていない。

(中略)

アパートは木造や軽量鉄骨で造られた賃貸住宅で、空室率は入居者を募集している総戸数のうち空いたままの住戸の割合を示す。

不動産会社のアットホームのデータなどをもとに算出した。
東京23区の空室率は33.68%。15年9月から6カ月連続で過去最悪の水準を更新した。千葉県でも34.12%と過去最悪の更新が3カ月続いている。埼玉県は30.90%、23区以外の都内は31.44%と比較的安定した水準だ。

引用:2016年6月1日 日経新聞より

例えば、6戸のアパートを建て募集をスタートした場合、入居者数と空室率は下記のようになります。
アパート

入居者募集戸数空室率
3名3部屋50%
4名2部屋33%
6名0部屋0%

東京23区の空室率は33.68%とのことなので、6戸のアパートだと2戸が空室になったままの状態。空室だと家賃収入はゼロになってしまうので貸主にとっては大きな痛手。家賃5万円だとしても2部屋空室のままだと、月額10万円の減収になります。

花子
月額10万円は、大変ね

なぜ、アパートの空室率は上昇したのか?

アパートの空室率の原因はいくつかありますが、先ほどの日経新聞の記事では相続対策としてアパート建設が進んだことを理由のひとつに紹介されていました。

首都圏でアパートの空室率が急速に悪化したのは15年夏ごろ。15年の相続増税にともない「アパートの建設需要が盛り上がり、空室率が急速に悪化した」(タス)。アパートの建設費用は家賃収入で賄うのが一般的だ。入居率が高いと想定した賃料収入に満たず、多額の建設費用をオーナーが抱えるリスクがある。

アパートの開発事業者は旺盛な建設需要に押されて営業活動に引き続き力を入れている。住友林業は全国の支店の営業・設計業務を支援するチームを4月に設立。大東建託は営業人員を20年に約4千人と16年と比べて1割強増やす計画だ。

引用:2016年6月1日 日経新聞より

2015年の相続税・贈与税法の改正により、相続税対策としてアパート建設が増えたとのこと。相続税の基礎控除額が変更になったので、今までは相続税がかからなかった方も相続税の課税対象者に。

相続税の基礎控除の引き下げ
(2014年12月31日まで)
基礎控除額: 5,000万円+(1,000万円×法定相続人)

(2015年1月1日以降)
基礎控除額: 3,000万円+(600万円×法定相続人)

また、土地を持っていると固定資産税がかかります。更地で持っているより、アパートを建てた方が固定資産税が安くなり、さらに相続税評価額も下げることが可能に。このような理由から相続税対策のひとつとして、アパート建設が各地で進んでいきました。

【参照記事】
改正相続税は2段階改正で増税された

相続税の改正の3つの落とし穴

さらに、近年サブリース契約という不動産会社がアパートを一括借り上げし、賃料収入を保証してくれるサービスも流行。サブリース契約については、詳しくあとで確認していきますが、不動産投資につきもののリスクをとらず一定期間、家賃収入を保証してもらえる夢のようなサービスです。ただ、やはり現実はそんなに甘くないようです。

【参照記事】相続体験談|アパート購入で失敗した相続対策

相続博士
営業マンの営業トークに騙されてはいかんぞ

サブリース契約が「リスクなく家賃収入を得られるもの」と、誤った認識が横行し、地方都市でもアパート建設が一気に増えました。相続税対策として多くの方がアパート建設に取り組まれると、需要と供給のバランスが崩れます。

市場には適正な価格があるのですが、借り手と貸し手の均衡が崩れると家賃の価格も変動。ただでさえ、人口減少に伴い空室率は上昇してしまう時代なのに、アパート建設ラッシュで市場の価格崩壊がおきてしまうことも。アパートの空室率が高まることで起きている問題を確認していきましょう。

アパートの空室率上昇にともなうトラブル

先ほどのサブリース契約のトラブルが増えています。2015年、NHKクローズアップ現代でも社会問題として取り上げられ不動産業界では話題になりました。

クローズアップ現代|アパート建築が止まらない 人口減少社会でなぜ

この番組で紹介されていたことを要約すると

★ 日本全国で空部屋率が高まっているのに、アパート建設は3年連続増加
都道府県別の空き部屋率

★ アパート建設の半数はサブリース契約タイプ
サブリース
需要が少ない場所でも借金で建築されるアパート。不動産会社が一括借り上げを行い、30年間など長期間家賃を保証してくれるサブリース契約が流行。入居者募集も物件管理もすべて不動産会社が行ってくれるので、一般の方でもリスクなくアパート経営を始めやすいスタイル。

★ 国民生活センターへのサブリース契約の相談が急増
サブリース契約のトラブル数
地方都市でも増え続けるアパート建設にともない、トラブル相談数も増加中。国民生活センターではサブリーストラブルをまとめた小冊子を作り啓もう活動を始めていますが、周知されるまではまだ時間がかかりそうです。

★ サブリースのアパート建設は不動産会社が儲かる仕組み
サブリースの現状

サブリースのアパート建設の営業をしていた元不動産会社の社員インタビューでは、不動産会社の利益はしっかり確保されていて、リスクはオーナーさんがすべて負う仕組みであるとキッパリ話されていました。

★ アパート建設の急増で地方自治体も大変なことに
サブリースで町も変動

人口増加を目指し、住宅建築ができるエリアを広げた埼玉県羽生市。規制緩和にともない100棟のアパートが建てられました。うち、サブリース契約のアパートが9割。空室率は一気に上昇し、平成15年の空室率は17.7%だったのが、平成25年には35.8%に。需要と供給のバランスが完全に崩れてしまい空室はこれからも増えることが予想されています。

★ アパートの空き部屋が犯罪に使われてしまうことも
空室アパートが犯罪に使われる

アパートの一室が大麻の保管場所として活用される事件が発生。このまま空室が増え続けると十分な管理もできず、街がスラム化してしまうのでは?という懸念の声も聞こえるように。

★ 道路、上下水道などのインフラの維持費は自治体負担
サブリースの道路下水の管理費

住む人が増えていないのに町のインフラを維持する費用は増加するばかり。自治体としても道路、上下水道の管理、ゴミ収集など、維持管理費の捻出に頭を悩ませています。
埼玉県羽生市では、今後、緩和した規制を元に戻し新規のアパート建築は都市部内でのみ行えるように方針を変更したそうです。

相続対策でアパートを建てる前に確認しておきたいこと

「簡単に儲かりそう」と、安易にアパート建設をするのはとても危険。上手に不動産を活用しながら相続対策を行うために気を付けるべき3つのことをご紹介します。

サブリース契約は要注意

先ほどご紹介したとおりサブリース契約は不動産会社が有利な契約内容になっていること、宅建業法の適用範囲外であるなどトラブルが多発しています。サブリース契約でアパート建設を検討する場合は、契約内容を事前にしっかり確認することが大切。契約内容が理解でき納得するまで、契約書に署名・捺印することはやめましょう。

地価の変動状況や賃貸市場を知る

アパート経営はそのエリアの賃貸市場の動向を知ることが重要。Home’sSuumoなど、簡単にインターネットで物件を探せる時代になりました。アパート建築を考えている場所で、同じ広さ、設備のアパートがいくらぐらいで賃貸されているのか?築5年、10年と築年数が古くなるといくら程度賃料が下落しているのか、事前に把握をしておきましょう。

アパ―ト経営

そのうえで、そのエリアの不動産会社に相談をするとより詳細な賃貸市場の情報交換ができるかと思います。

最近は、少子化の影響を受け、郊外の大学キャンパスが都内のキャンパスと統合されるなど、急激な人口増減によって大きく相場が変動することもあります。アパート建築は建ててからが勝負。必ず、そのエリアに建てても「損はしないか」自分の目で確認をしましょう。

アパート経営はビジネスだ

「不動産会社に丸投げして簡単に儲かる」そんな甘い誘いは100%怪しいです(笑)リスクがなければリターンを得ることができないのが現実。アパート経営は立派なビジネスです。事業者として自分の目と頭で収支シュミレーションを何度も行い判断をしていきましょう。

相続博士
他人任せはいかんぞ。自分で決めることが大切じゃ

信頼できる専門家にたくさん相談をしながら、自分に合った相続対策を進めていけたら良いですね。

相続対策でアパート経営をスタートしようとしている方のご参考になれば幸いです。

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