サブリースのアパート建築で相続対策に失敗

77歳 職業:農家 小出さん アパート購入で失敗した相続対策

NHKクローズアップ現代で紹介された小出さん(87歳)。サブリースでアパート経営をはじめて10年。不動産会社の一括借り上げ制度で家賃が保証され、安心の老後生活を送るはずが、大きなトラブルに発展してしまうことに。

番組で放送された内容をご紹介しながら、相続対策のアパート建築時に同じトラブルに巻き込まれない方法をまとめました。

今もなお増え続けるアパート建築。しっかりと価値を見極め投資をしたら、とても良い相続対策となりますが、判断を誤ると大きな負債を背負い大変なことに……。相続対策としてアパート建築を検討される方は契約前に必ずリスクを確認しておきましょう。

NHKクローズアップ現代|アパート建築が止まらない ~人口減少社会でなぜ~

サブリースのアパート建築を検討した経緯

ずっと夫婦で田畑を耕してきた小出さん。農家として生きてきたものの高齢になり広大な農地を管理するのは大変になってきました。

農家

しかしながら、畑を放置していると税金が上がってしまいます。節税するには作物を育てるしかないけど自分たちだけでは大変……。誰かにお願いするのもお金がかかるし、もし、自分たちが死んでしまうと相続税も発生する

そう考えていたときに、不動産会社から提案されたのがサブリースのアパート経営。

アパートを建設することによって家賃収入も得ることができ、課税評価額も下げられ相続税対策になると、不動産会社の営業マンに説明されました。

サブリース

サブリース契約とは、アパートを建築し不動産会社が一括借り上げ。30年間の家賃保証つき。空室でも満室でも一定金額が不動産会社から小出さんに支払われる、という制度でした。

■ 小出さんの契約した時の状況
・77歳のときに、サブリースでアパートを建築。
・建築費用は1億円。
・すべてローン(借金)で契約。
・30年間契約で不動産会社の一括借り上げ。
・家賃保証付き。

アパートを建築後の状況

アパート建築後、まわりにも同じようなアパートがサブリースで建てられました。
アパート

アパートが急増し入居者も激減。18部屋のうち6部屋が空室、アパートの3分の1が空き部屋となってしまいました。

家賃保証の金額を下げたいと不動産会社から提示

10年後、不動産会社から家賃の保証金額を下げたいと説明がありました。もちろん、小出さんは「家賃収入が下がるなんて聞いていない!」と反論。しかしながら、契約書にはアパートを建築して、10年後からは2年ごと賃料保証額を見直せる内容となっていました。

相続博士
このような契約トラブルが多いのじゃ

小出さんのようにサブリース契約でトラブルに発展してしまうケースのほとんどが、「家賃保証額の減額の可能性について知らなかった」というもの。被害者の方は、契約内容の説明が不十分で理解できていないまま、契約書に署名・捺印してしまい、不動産会社と貸主で認識の違いが生まれてしまっている状態でした。

不動産会社は説明責任を果たしていないのでは?

不動産取引は一般の方には馴染みがありません。日常的に不動産取引をしている不動産会社と一般消費者の間には、当然、不動産の知識・情報に差が出てしまいます。このため、一般消費者を保護するために、不動産取引には「宅建業法」と呼ばれる法律で細かい規定が定められています。

例えば、売買や賃貸借契約時には、契約書以外にも「重要事項説明書」という書面が用意されます。契約内容のうち特に需要な事項について、書面と口頭で資格保有者(宅地建物取引士)が説明をしなければなりません。不動産会社はこの宅建業法を遵守しないと、営業停止・宅建業の免許はく奪など、厳しい措置を受けなければなりません。

花子
やっぱり、この不動産会社はサブリース契約のリスクの説明義務を果たしていないわ。小出さんが泣き寝入りをするなんて!納得できない!
相続専門の不動産屋・山田
残念ながら、サブリース契約は宅建業法が適用されません

サブリース契約は宅建業法適用外。法律の抜け道が落とし穴

そもそも、宅建業とはどのような行為を言うのでしょうか?

不動産業には、売買、仲介(「媒介」ともいわれます)、賃貸(土地や住宅・ビルの大家)、管理(分譲マンションの管理、賃貸物件の管理等)など、様々な業種が含まれます。
一方、宅建業は、不動産業のうち、売買や仲介といった取引(流通)を取り扱う業種のみが含まれます。

引用:(公財)不動産流通センター|不動産ジャパン

数ある不動産業のなかでも、売買と、当事者の間に入ってサポートを行う仲介の場合が、宅建業法の適用を受けます。

宅建業法適用

しかし、サブリース契約は転貸借契約という契約スタイル。不動産会社は間に入るのではなく、貸主の地位を引き継ぎ、自ら貸主として借主さんと契約を締結します。自ら貸主になる場合は、宅建業法の適用を受けないのです。

宅建業法適用外

取引態様取引態様の意味宅建業法の規制重要事項説明義務
媒介(仲介)不動産会社が貸主と借主の間に入り、契約成立の業務を行う適用あり義務あり
代理不動産会社が貸主の代理人として募集・契約手続きを行う適用あり義務あり
貸主貸主自らが所有する物件を直接賃貸する適用なし義務なし

サブリース契約では、宅建業法の適用がないため重要事項説明も義務もなく、契約内容の説明方法も厳格に定めらていません。

相続専門の不動産屋・山田
説明責任を果たさないのは、違法ではないが不適切だとは思います

不動産取引の法律の穴をついた嫌なやり方だと私は思います。一般の方にはわかりにくい不動産契約で、完全に不動産業者が有利になるような契約内容。「リスクもなく楽に儲かる」という話はあり得ません。サブリース契約も漏れなくリスクが伴っていますので、ご注意くださいませ。

アパートオーナーは事業者扱い

アパート経営は不動産投資。これは一般の消費者として扱われず、事業者とみなされます。事業を行うにはリスクが伴うのも当然のこと。その分、一般消費者のように保護はされません。

自己責任で取引きを行うことが大前提となっているからです。サブリースでアパート経営をされる方は不動産投資に慣れていない方が多いので、「自分が事業者である」という認識も持たれていない方が多いかもしれません。

まずは、この意識を変えていくことが大切です。

サブリース契約締結前に確認すべきこと

サブリース契約では営業マンがプレゼンする商品内容がそのまま契約内容に反映している訳ではありません。通常、小さな文字もしくは、但し書きや、特約がつけられておりますので、注意深く契約内容を確認していきましょう。

一般的にサブリース契約でトラブルに発展しやすい契約内容をご紹介します。下記の項目は必ず注意深く読み、記載内容が理解できないときは不動産会社に何度も確認。もし、明らかに不動産会社が有利な条件である場合は、その場で署名・捺印をするのではなく契約書の訂正依頼を行いましょう。

契約書

家賃保証金額の見直し規定

家賃保証と言いながら、保証される金額は変動可能なケースがほとんどです。例えば、建築後10年間は家賃保証額の変更はないが、以降、「2年ごとに家賃保証金額を見直す」などの記載がある場合が多いです。

年々、人口は減少し空室率は増加の一途をたどります。その環境の中で、アパートを満室経営するのは至難の業。立地や周辺の需要を考えると、家賃収入が減少してしまうことも納得できる方が多いのでは?不動産会社の甘い営業トークに騙されずに、しっかりと確保されている収入額と期間を確認しておきましょう。

募集開始から一定期間、家賃保証なしの特約

これは完全に家賃収入を保証していないのでは?と感じる特約ですが、よくつけられています。例えば、入居募集開始後4か月間は家賃保証がない、など、一定期間を保証対象外とする契約内容です。

契約解除には違約金がかかる

サブリース契約を解除するには申入れ期間・違約金に注意。解約は6ヶ月前までに申し出が必要だったり、半年以内の解約時には4ヶ月分の違約金が必要など、不動産会社に有利な条件を設定されていることがよくあります。

更新手数料・敷金の取り扱い

通常賃貸借契約では更新料・敷金が発生します。借主から貸主へ支払われるお金ですが、この取り扱いも注意が必要です。不動産会社によっては保証しているのは、あくまで「賃料のみ」というケースもあるので、その場合は、更新料・敷金は誰がいくら受け取るのか確認をしておきましょう。

修繕費用の負担

先ほどの手数料収入とは逆に、メンテナンスにかかる修繕費用は貸主負担の場合もあります。不動産会社はあくまで家賃保証しかせず、その他、運営費用は貸主に請求をするパターン。不動産会社の指定で割高な業者を使わなければならないこともあり、修繕費用の負担割合と修繕の実施方法は明文化しておくことをおススメします。

さいごに

相続対策として、一般の方でも簡単にスタートできるアパート経営のサブリース契約。不動産会社の営業トークだけ聞いているととても良いサービスですが、実際は、不動産会社が儲かるようにできています。

空室リスクも建設費用もすべて不動産会社の利益分が乗せられているので、アパート建築を行った時点で不動産会社の利益は一定数確保できる状態です。また、相手は不動産取引きのプロ。サブリースの契約書でも、やはり不動産会社に有利な契約内容の条件を設定されてしまうでしょう。

このようなリスクをとったうえでも、サブリース契約でアパート大家に挑戦しますか?

アパート経営は不動産投資です。収益を得るにはリスクをとったり、自分の頭や体を使って利益を出す方法を考えなければなりません。第三者にすべてを任せておくだけで、安定した収入が確保されるなんて夢の話。現実はそんなに甘くないので、しっかり自分で収支シュミレーションを行いアパート経営に挑戦していけたら良いですね。

家族や知人が、「サブリースでアパート建てようと思うんだけど」とお話されたら、ぜひ、上記のリスクも一緒にご確認いただけたらと思います。

不動産は上手に活用すれば、とても良い相続対策ができます。メリットデメリットを比較しながら、自分たちにとって一番良い選択をしていけたら良いですね。

【参照記事】相続対策でアパート建設は危険?不動産屋が教えないリスク

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