婚外子の相続|違憲判決で婚外子の相続分はどうなるのか
記事の最終更新日:2016年06月22日
カテゴリ:ニュースとコラム
婚外子の相続分について、嫡出子と同額の相続分を認める判決が今年10月28日東京地裁で言い渡されました。
今年9月、婚外子の相続分が嫡出子の相続分の半分であることは「違憲」であるという判決が
最高裁で言い渡されたことを踏まえ、婚外子である都内の40歳代男性が父親の遺産について
嫡出子と同じ相続分を求める裁判で、東京地裁はこの男性の請求を認める判決を言い渡しました。
この男性の父親が死亡したのは2006年。
当時は認知されていなかったことから父親の妻と子供3人が遺産を相続。
その後、婚外子と認められたことにより相続分を求める裁判が可能となりました。
法改正に反対意見も出ている中、9月に最高裁が示した判断を基にした初めての判決とみられており
婚外子の相続分の民法改正において肯定的な影響を与える結果となったのではないかと言われています。
死後認知とは?
認知とは、婚姻関係のない男女間で生まれた子供の親であることを法的に認めることです。
母は出産により親子関係を築きますが、父親は認知届け出をすることにより親子関係を築くことができます。
今回、訴えを起こした男性は、父親が死亡した時点では認知されておらず
法律上父親ではありませんでしたが、「死後認知」の手続きをもって親子関係を証明しました。
死後認知とは、結婚していない男性と女性の間に生まれた子どもを認知しないまま
男性が亡くなってしまった場合に父子関係を成立させるための制度です。
死後から3年以内であれば、認知請求訴訟を起こすことができます。
遺言書の重要性
最高裁の判決によって、今後も婚外子と嫡出子の相続分を同額と認める判決がでる可能性があります。
そこで、今後は遺言書の重要性が今以上に高まるのではないかと思われます。
例えば、遺言書がある場合とない場合では次のように相続分が変わってきます。
被相続人の財産6,000万円
相続人:3人(妻、子供2人(1人婚外子)
遺言書がない場合
法定相続分通りの相続となるので、妻が遺産の半分で6分の3、子供2人で残りの半分を相続するのですが
現在の法律では婚外子は嫡出子の半分が相続分となるので
嫡出子の相続分は6分の2、婚外子の相続分は6分の1となります。
【内訳】
妻:3,000万円(6分の3)
子供(嫡出子):2,000万円(6分の2)
子供(婚外子):1000万円(6分の1)
※婚外子が嫡出子と同額の相続分を求めて裁判、それが認められた場合
妻:3,000万円(4分の2)
子供(嫡出子):1,500万円(4分の1)
子供(婚外子):1,500万円(4分の1)
遺言書がある場合(遺言書の内容:妻へ全財産を相続させる)
遺言書通り、全ての財産が妻へ相続されます。
婚外子である相続人が遺留分を請求してきた場合は
法定相続分(6分の1)の半分が相続分となるので、6000万円の12分の1の500万円を相続します。
今回は嫡出子の子供は遺留分の請求をしないものと仮定します。
【内訳】
妻:5,500円(12分の11)
子供(婚外子):500万円(12分の1)
※婚外子が嫡出子と同額の相続分を求めて裁判、それが認められた場合
妻:5,250円(8分の7)
子供(婚外子):750万円(8分の1)
遺言書を残すことにより、これだけ遺産分割に差がでてきます。
婚外子、もしくは認知していない子供がいる場合
ご家族がそのことについて知っているという方はほとんどいないのではないでしょうか。
亡くなった後に配偶者や子供がその事実を知り、相続手続きが難航することは多々あります。
遺言書を残したからと言って事実を隠せるわけではありませんが
今回のニュースのように、生前に認知していなかった子供が
自分の死後に認知手続きを行うことにより相続人となり
訴訟を起こした場合は嫡出子と同額の相続が認められるという判決が今後も出されることも考えられます。
遺言書の書き方にもよりますが、嫡出子以外の子供への遺産相続を望んでいない場合
誰に相続させたいかという意思を遺言書で残すことで嫡出子へより多くの財産を残すことができます。
遺言書は残された家族のためのモノであり、自分の死後に意思を示す方法は遺言書しかないのです。
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記事の最終更新日: 2016年06月22日