遺言控除とは?遺言書で相続税が安くなる時代へ

遺言控除とは?遺言書で節税する方法

相続税とは、亡くなった方(被相続人)が所持していた遺産を相続した方(相続人)にかかる税金のことです。

「基礎控除額:3000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超えてしまうと、相続の発生(被相続人の死亡の翌日)から10か月以内に相続税を支払う必要があります。

※相続税は10か月以内に現金で一括払いしなければなりません

相続税には、配偶者控除未成年者控除など支払いを免除される控除がいろいろあります。

相続税のいろいろな控除について詳しくはこちら

2016年5月30日現在、今後、導入が検討されている「遺言控除」について紹介するぞ

遺言控除が実施されれば、相続税をさらに節税できる

遺言控除とは、有効な遺言書(遺言)通りに相続を行った場合、一定の相続税を基礎控除額にプラスして控除してもらえる制度のことです。

遺言控除は2015年7月に自民党の『家族の絆を守る委員会』が提案したもので、遺言書を残すことで被相続人(亡くなった人)が考える遺産分割方法で遺産を分け、相続トラブルを防ぐ狙いがあります。2018年までの導入が予定されています。

・被相続人が遺言書を残すことでどのくらいの額が控除されるのか?

・どんなタイプの遺言書なら控除の対象になるか?

などはまだ未定ですが、この控除制度ができることで遺言書を作成する人が増えることが予想されます。

なぜ、遺言書を残すと相続税が安くなるの?

この制度が検討されている背景として、下記のような目的があります。

 

  • 1. 遺言による遺産相続の紛争防止
  • 2. 次世代への資産移転
  • 3. 在宅介護の促進

 

 

1. 遺言による遺産相続の紛争防止

相続財産の分配では、たびたび争いに発展してしまうことがあります。この件数は年々増加するばかり。

相続争い件数

多くの方は、「わが家には争うほどの財産はない!」とお考えですが、実際、相続争いになるのは多くの財産を持っている方だけではありません。

遺産額別の調停件数

 

1000万円以下の遺産相続で争いになっているケースが約3割75%の方が、5000万円以下の遺産額で相続争いに発展してしまっています。

遺産額は、預貯金などの現金以外にも、不動産、有価証券、宝石、生命保険の死亡保証金など金銭に換算できる経済的価値あるものすべてが対象となります(一部非課税となるものあり)。都内に土地や建物などの不動産を持っていらっしゃる方は地価の値上がりによって予想以上に相続財産額が増えてしまうケースもあり、数千万円の遺産額は一般家庭も対象となる金額なのです。

 

また、1000万円以下の遺産額でも争いに発展してしまっていることを考えると、相続税がかからない家庭でも相続対策は必要。遺言がないために、余計な時間とエネルギーを使い、家族の人間関係まで崩れてしまうのはとても悲しいこと。

これらの争いの原因の1つは「遺言」がないこと。遺言書がないために、相続人同士で遺産分割協議を行い、その協議がまとまらず争いへ発展してしまう場合が多いようです。
  

2. 次世代への資産移転

日本は超高齢化社会に突入し、年々、平均寿命は高くなってきています。2014年の女性の平均寿命は86歳(世界第1位)男性は80歳(世界第3位)

医療・介護サービスが充実したことで、世界的にも日本は長寿国となっています。これにともない、相続人の平均年齢も高齢化が進行。相続税の申告時の被相続人と相続人の年齢はこのように推移しているようです。

被相続人の死亡時
(主税局調べ)

1989年の被相続人の方の年齢比は、下記の通りでした。

59歳以下の方・・・・・・11.5%(子どもの年齢は20歳代以下と想定)
60歳から69歳の方・・・・18.7%(子どもの年齢は30歳代と想定)
70歳から79歳の方・・・・30.2%(子どもの年齢は40歳代と想定)
80歳以上の方・・・・・・38.9%(子どもの年齢は50歳代以上と想定)

24年間の年月を経て、このように変化していきました。

————–

2013年の被相続人の年齢比。

59歳以下の方・・・4.5%(子どもの年齢は20歳代以下と想定)(▼7%)
60歳から69歳の方・6.8%(子どもの年齢は30歳代と想定)(▼11.9%)
70歳から79歳の方・18.4%(子どもの年齢は40歳代と想定)(▼11.8%)
80歳以上の方・68.3%(子どもの年齢は50歳代以上と想定)(△29.4%)
(うち23.7%は90歳以上)

被相続人の年齢は、80歳未満の方はすべての世代で減少傾向に。その分、80歳以上の方は1.75倍に膨れ上がりました。

 
80歳世代を親に持つ子ども世代は50代以上の方が相続人になるでしょう。一般的に50歳までは子どもの教育資金や住宅ローンなど、お金がかかる時期と言われています。50歳を過ぎると支出額が落ち着いてきます。

このため、50歳までの消費活動が活発な時期に資産が親から子へスムーズな移転が行えず、日本社会としてみても経済活動が活性化されない、という問題があります。

花子
60歳以上で相続をしても、すぐまた次の相続が起きてしまいそうだわ

この問題に対して、政府は優遇措置をとることで、若年世代への資産移転をすすめるよう対策を進めています。孫への教育資金の提供や、結婚、マイホーム購入資金のための贈与は非課税枠を設定。一定金額までは贈与税が課されることなく資産を次世代へ渡すことができます。

【参照記事】
ジュニアNISAで相続対策する方法

生前贈与で相続税対策

 

 

3. 在宅介護の促進

超高齢化社会に突入した日本では、これからますます大きな問題となるのが「介護問題」。需要は増える一方ですが供給が追いつきません。介護施設の数、介護スタッフの数、予算……あらゆる課題が山積み状態。平均寿命とともに「健康寿命」と呼ばれる指標があります。健康寿命とは、自立した生活(=介護が不要な状態)ができる年月を表します。

平成22年の統計資料「健康日本21」によると、女性の健康寿命は76.42歳、男性の健康寿命は70.42歳でした。つまり、平均寿命から算出すると、10年程度は誰かのサポートを受けたながら(介護)生活をしていくことになります。


介護と相続の難しい問題だわ。長生きはしてほしいけど、健康でないとお金・時間の負担も大きいのが現実。寿命はのびる一方だから大変な時代だわ

この10年間、すべて国の力でまかなうことは不可能です。家族が支え合い介護問題に取り組んでいかなければいけません。そこで、まずは、どのような介護が理想なのか?親と子どもで話し合うことが大切。親には親の想いがあり、子どもには子どもの事情や考えがあります。

遺言書を書くときに、必ず考えることになるのが、介護・医療の取り扱い。介護はどのようにしてもらいたいのか?延命治療を希望するか?など、自分・家族にとって一番良い方法はどんな形なのか家族で意思を確認しておくとトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

また、現在、遺産相続時にトラブルに発展しやすいのが寄与分の取り扱いです。介護など被相続人のサポートを熱心にした人でも遺言書がなければ、基本的には、法定相続分で相続手続きを進めていきます。

【参照記事】
親の介護をしても報われない?寄与分でも多く相続できないケース

介護した人に寄与分を使って相続させる方法|兄弟の相続体験談

遺言がないとトラブルに発展しがちな介護問題。政府としては、遺言控除制度によって遺言を活用しながら介護問題も家族で取り組み、在宅介護をさらに普及させていきたいのでしょう。2018年の法改正にむけて、これからも遺言控除に注目していきたいと思います。

遺言書を残すなら、公正証書遺言がおすすめ

遺言書には自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言という3つの形式があります。

秘密証書遺言は、婚外子(非嫡出子)や隠し子がいる場合など「誰にも知られたくない事情がある際」に作成する遺言なので作成されることは少ないです。

多くの人が自筆証書遺言か公正証書遺言を残します。

自筆証書遺言は、誰でもすぐに作成でき費用もかからないので作成する人が多いのですが、ひとつでも不備があると効力を持たない可能性があるため公正証書遺言を作成することをおすすめします。

公正証書遺言は、印鑑証明や住民票など必要書類を用意し、公証役場で公証人+証人2名と作成しなければならないため自筆証書遺言に比べると少し手間や費用がかかりますが、公証人がきちんと法的な不備を訂正してくれるので、遺言が無効になってしまう心配がありません。

公正証書遺言の作成方法

遺言書を作成するメリット

・自分の意思を相続人に伝えることができ、意思に沿った相続をしてもらえる

・残された家族の手間が減る(相続人全員の意見を一致させる遺産分割協議をしなくて済む)

・法定相続人ではない(もともと相続を受ける権利がない)長男の妻や孫、内縁の妻などにも財産を与えられる

・相続したくない相手に相続させない(相続人控除)が可能

・相続人たちの相続争いを回避できる

遺言書を残すと上記のようなメリットがあります。

特に不動産など分けにくい相続財産があると相続争いが起こってしまう可能性が高いです。


相続財産が「自宅のみ」という人は結構多いもの。
夫婦だけで夫が亡くなった場合妻に全額相続させるつもりでいたのに、突然会ったこともない夫の兄妹が相続の権利を主張してきたり……相続って「家族のことだから大丈夫だろう」と思っていても、思わぬトラブルが起きやすいのじゃ

残された家族の争いを避け、意思を伝えるために活用されてきた遺言書ですが、遺言控除ができれば節税目的で遺言書を作成する人が増えると思います。

今後はマイナンバー制度がより便利になり、相続人全員の住民票を集めるなどの相続手続きも今よりラクになるかもしれません。

タグ: 控除 相続税
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