介護した人に寄与分を使って相続させる方法|兄弟の相続体験談
記事の最終更新日:2016年06月22日
カテゴリ:相続の体験談
55歳男性 舘崎さん(仮名)の相続体験談
遺産相続で、もめました。
私は、55歳男性。民間企業に勤めるサラリーマンです。勤務先は通信会社。営業部の部長を担当しております。父の相続時に兄弟とトラブルになりました。
まさか、自分がこんなことになるなんて、考えてもいませんでした。
父親の死
3ヶ月ほど前に父が亡くなりました。おととし、母が先立ち、そのあと急に父は衰え、病気がちになりました。そして、昨年がん宣告を受けました。発見された当時、すでに、がんは進行しておりステージ4の末期がん。余命1年と診断されました。そして余命どおり父は闘病生活の甲斐なく旅立ちました。
あっという間の1年でした。
父の葬儀が終わり、遺産相続の話になりました。
母はすでに他界しており、相続人は私たち兄弟3人。父からの遺言はなかったので、長男である私が相続財産の振分けを行いました。
相続財産は、おおまかに言うと
父の住んでいた家(査定金額700万円)
貯金 1500万円
私は、兄弟で均等に分けようと考えていました。
私の提案
しかし、二番目の弟、次男が異議を唱えました。
次男の主張は、
確かに、次男は実家から一番近くに住んでいたため、両親の世話や税金のやりとりなど、両親の生活に関わる手続きをやってくれていました。次男の労力を考えると、遺産の均等配分に納得できない気持ちもわかります。
私は次男の主張を了承したのですが、三男は反対しました。
三男の主張は、
三男も実家暮らしの期間が一番長いことを理由に、その間、両親をサポートしてきた、とを主張してきました。
次男も三男も自分たちの両親の世話したことをアピールし、相続財産の均等分配はおかしい!という主張でした。弟たちにそう言われると、長男の私が一番何もやっていない……ということになってしまいます。
私は、「遺産相続なんてすぐに終わる」と軽く考えていましたが、とんでもない大問題に発展。父からは生前、「(相続財産は)兄弟で仲良く分けろ」としか言われていなく、書面に残すことはしていませんでした。遺言として書面に残しておかないことで、こんなに大変な目にあうなんて思いもしませんでした。今は遺言を残しておかなかったことをとても後悔しています。
父の相続財産を巡って兄弟の争いは、しばらく続きました。
なんとか解決
次男と三男の間に私が入り話し合いを続けました。その結果、ようやくお互い納得できる着地点を見つけることができました。
和解策
★ 父の住んでいた家を次男に預ける
★ 貯金1500万円は、
私が500万円、次男が300万円、三男が700万円で分配
両親の面倒や介護をしてくれていた弟たちへ多く遺産を分け合うことで、次男も三男も納得。無事に遺産相続手続きを進めることができました。
幸い私の年収は1000万円以上あり、金銭面ではまったく困っていなかったので冷静な判断ができたと思っています。
それにしても、父が元気なうちに遺産の配当を遺言で残してもらえばよかったです。遺言書があればこんな争いをすることもなく、兄弟が嫌な思いをすることもありませんでした。
今回は根気よく話し合いを重ねることで何とか和解が成立。遺産相続が原因で兄弟の縁を切るような最悪な事態を避けられたので、ホッとしています。
相続コンサルタントからのアドバイス
遺言書がないために、相続争いが発生してしまうケースはとても多いのが現状。「うちは仲が良いから、遺産は仲良く分け合ってくれるだろう」と考えていらっしゃる方も多いのですが、どんなに仲が良い家族であってもトラブルに発展することはあります。そして、一度、こじれてしまった人間関係を修復するのは困難です。
【参考記事】
特に介護など、負担割合が異なる場合は親族間で争いに発展してしまうこともあります。
民法で決められている法定相続分に従って遺産分割を進めていくことが原則。しかしながら、被相続人に対して特別な貢献をした者には、その割合に応じて法定相続分を超えて相続する権利が認められています。これを寄与分制度と言います。今回の舘崎さんも寄与分で遺産分割をした事例でした。
寄与分制度とはどのような制度か確認していきましょう。
寄与分とは?
寄与分は、民法で下記のように定められています。
民法 第904条2項
1.
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
つまり、亡くなられた方に特別の貢献をされた相続人には、その貢献度に応じて相続財産を受け取ることができると定められています。
ただ、この寄与分は数値化しにくく、介護などで親族間の人間関係が悪くなっているときなどは当事者同士の協議がなかなかまとまらないケースもあります。
と、お互い自分がやったことに関しては主張しがちですが、他人がやってくれたことには過小評価する傾向があります。
親族であっても介護はとても多くのエネルギーを使います。協力し合って支え合えるのが理想ですが、現実は異なることが多い気がします。小さな不満を貯めこんでいる場合は、相続時にその不満が爆発してしまうことも。自分の苦労が報われないと感じると、遺産分割協議もこじれてしまうケースもあります。
また、民法では寄与分制度を認めつつも、家族は助け合いながら生活するもの、という基本的な考え方があります。
親子間では扶養義務が定められており、子どもが親の介護をすることはある当然の義務と解釈されています。
このため、先ほどの条文でも、寄与分を認めるには被相続人に対して特別の寄与が必要となっています。通常の寄与だけでは寄与分は認められません。
つまり、被相続人のお見舞いに病院に通ったり、被相続人の事業を一時的に手伝った程度は通常の寄与。寄与分が認められるには、被相続人の財産を著しく上昇させたり、特別な貢献が必要なのです。遺産分割の寄与分について詳しく知りたい方は下記の記事もあわせてご覧ください。
【参考記事】
遺産分割の寄与分とは?法定相続分より多く遺産相続できる
相続人だけで寄与分を考慮して遺産分割していくことは実際はとても大変です。このような場合は、遺言書を活用することでスムーズに遺産分割手続きを進めることができます。
残された家族に余計なトラブルの種をまかぬよう、しっかり遺言書の準備をされることをおススメします。
遺言書とは?
遺言書(遺言)とは、残された相続人に対して自分の意思を伝えるための手紙。生前の想いを残す大切な手段です。遺言書があるかどうかで、相続手続きの進め方が大きく異なります。遺言書がない場合は、相続人で遺産分割協議が必要となり、今回の舘崎さんのように親族(兄弟)であっても、協議がまとまらずトラブルに発展してしまうことも少なくありません。
遺言書は、相続人のトラブルを未然に防ぐためにとても大切なものなのです。
【参考記事】
遺言とは?3種類の遺言書
最近は「終活(しゅうかつ)」という言葉も雑誌や新聞で見かけるようになり、人生の終わりをより良いものにするために準備を進める方が増えてきました。遺言書の書き方、自分の想いを反映させた遺産分割の方法について相談したい・質問したいという方は、相続対策コンサルタントの無料相談をご利用ください。
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記事の最終更新日: 2016年06月22日